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2023.02.27
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建築視察 猪股庭園

東京中野区の工務店:小河原建設 住宅事業部 佐藤です。

先日、設計のスタッフ全員で「いい建築を見て目を肥やす」という目的で建築視察に行きました。今回はそこで見たもの、感じたことをご紹介したいと思います。

今回見学したのは世田谷区にある猪股庭園。こちらは (財)労務行政研究所の理事長を務めた故・猪股猛氏ご夫妻の邸宅として建てられたものです。
樹木で覆われた広大な敷地(560坪)に建つ、約110坪の床面積をほこる猪股邸は、昭和初期に活躍し、文化勲章を受章した巨匠、吉田五十八の手により設計された近代数寄屋の建物です。

旧猪股邸は私たちがいつも過ごしている家よりかなりゆったりとした造りの大きな平屋建ての住宅でした。この庭は散歩するだけでなく、建物は四季折々の庭を室内から楽しむ様々なしかけのある建物でした。


玄関を入って居間の入口をくぐり、左に目をやると、最初に飛び込んでくるのが大開口から見える庭です。3間近くある開口部は建具がすべて壁の中に引込まれ、室内と庭が一体化するつくりで、雪吊りという松の木に積雪対策をしていたのですが、まずその大きさに圧倒されました。雪吊りとは雪が樹木(松の木)の枝に積もって折れないよう保護するのが役割の人工物ですが、その様子が巨大な絵を見ているようで圧巻でした。ガイドの方によるとその大開口はちょうど座った時に庭がよく見えるようになっていて、たたきや、屋根の出など計算されて作られているとのことでした。


大きな見せ場の開口の後ろには箱庭があり、その横にはご夫妻の食事をするテーブルと椅子が置かれていて、大きな庭と小さな庭もちょうどいい感じに目に入るテーブルの高さを64cmと低めに設定することで、重心を下げていて、座ってとても居心地がよかったです。天井の高さは2.79mとかなり高かったですが、居間は空間が大きいのでちょうどよく、高すぎる感じはしませんでしたし、重心を下げていたので、大きな空間だけれどもとても落ち着ける空間になっていました。

 

書斎は基本座っているので和室と同じように重心はかなり低めになるようにつくられており、作り付けの収納のカウンターの高さも他と同じ64cmでした。一般的にテーブルや棚は700センチかそれ以上のものが多いのですが、計算されて作られていました。

枠や建具は吉田五十八特有のディテールですべて斜めにカットされていて枠を細くシャープに見せていました。その斜めの部分に枠を合わせるというとても難しい納まり、こだわりの納まりが随所にありました。
それ以外にも細かいディテールや工夫がたくさんありました。

例えば、書斎にある掘りごたつは、通常は床の中にこたつがはまり込んでいるのすが、取り出して、設置するのに床の中から足受け回転て出てくる仕掛け。

 

 


コーナー窓の雨戸は占めてみると行き過ぎることなく、ちょうどいい位置でぴたっと止まるようになっていた。建具の後ろをみると、ちょうどいい位置のところで木製の落としが落ちるようになっている。


↑玄関の床が浮いてる。中をのぞくと金物で持ち出している。

随所に工夫や、ストーリーが考えられていて、その効果を出すためにアクロバティックなことをしているのですが、心地の良い空間をつくっており、それが気にしていなければ全く気が付かない、でもなんかいいよねと感じる。そこがとてもすごいと思いました。

また、庭園にある樹木はすべての季節で楽しめる樹木が植えられていて、すべての樹木や草や苔などが書き込まれた図巻のような造園計画の図面があり、確かに量の差はあるが、四季すべてにわたって植物が楽しめる計画になっていました。

この建物は現在は世田谷区に寄贈され無料で公開されています。
お近くへ行かれる際は是非立ち寄って見られたらいかがでしょうか。極上の空間を楽しめますよ。

住宅事業部 佐藤

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